Sony失われた20年と炊飯器大王
「ソニー 失われた20年 内側から見た無能と希望」を数ヶ月前に読み終わった。 読み始めて途中から出井氏の悪いところばかりが延々と書かれていて、読んでいるコッチも気分悪くなったりしたので、途中に数週間の休憩を入れたりして読み終えた。
この本に書いてあることを前提として考えると、ダメな経営者がダメな後継者を選んだり、学歴だけで選ばれた人が殆どとのこと。立ち直ることより、有志がスピンアウトして、その他大勢だけ残して放置するのが良いのではないのでしょうかね。私個人としては過去の良かった頃の記憶が抜けない・比較してしまうだけであって、企業としては継続できるんじゃないのかと思うんですけどね。
この本に書いてあることで的を射ていると思ったのが、ソニーにお金がないころは面白いことができる場所であるから人々が集まったが、お金が有る頃はお金が目当てで集まった人が多かった、というような表現。 書籍が手元にないので、正しく引用できず。 この本ではUSのハリウッド方面への投資でさんざん金使ったことについて、この表現を用いていたが、ひいては日本に多々ある大企業病な組織全体に言えるのでと思う。
友人その他から、就職先として大企業を目指す・目指した理由を聞いたら、「長期的に安定しているから」ということをいう人が多かった。 「高い利益率を維持し続けて、高いシナジーが発揮されていると思うから、そこで一緒に働きたい」と言って大企業に就職した奴は、そもそもそんなに多くなく、いたとしても現在では更に条件の良い仕事に転職したりしている。 長期的に安定していることを多として就職した人たちばかりが残ると最悪で、退化すれども成長ない企業となってしまう。 電子立国でチヤホヤされた企業がホボ軒並み潰れそうなのは、まさにこの状態だよなぁ。
この本は香港のTimmyにあげた。 「なぜ日本の電機産業は昔のような勢いを失ったの?」なんて質問をされたことがあり、おおよその答えがこの本に書いてある気がしたから。 読むのに挫折しそうな本なので、日本語勉強中の人への課題図書として良かったのかは、ちと疑問だが。
もう一冊は 「同じ釜の飯 ナショナル炊飯器は人口680万の香港でなぜ800万台売れたか」。 香港でのパナソニック製品の独占輸入販売を行なっている信興電器貿易の蒙民偉氏のお話。 父親は祖籍が広州で長崎生まれの華僑で、父親が松下の乾電池炭素棒を輸入販売していたことがきっかけで、松下の製品を輸入販売することとなる。 「日本で売れるものをそのまま輸出しても売れない」ということで、積極的に製造元の松下と調整して、中国人社会に広く商品を販売していった。 取材の中で松下側の人は信興電器は無線(テレビ・ラジオ・音響機器)で大きくなったと思っていたし、数の上でもそうなのだが、香港人にとっての信興電器やパナソニックは電気炊飯器の会社なのだそうだ。 そんなこともあり、蒙民偉氏は電飯煲大王とも呼ばれている。 日本語だと炊飯器大王といったところだろうか。 なかなかステキな名前だと思う。
蒙民偉氏は2010年7月に亡くなられた。 時を前後してパナソニックも業績が悪いって話が増えて来ましたよね。 炊飯器大王が亡くなったから業績悪くなったというわけではないだろうが、新しい世代の炊飯器大王に相当する人物たちがパナソニックに寄り付いていない・出てきていないのは事実なのだろう。
日本の電器電子産業が成功した時代の話を聞いてから現状を見ると、あの時代はもう遠くに終わっているし、現状になった理由などを挙げると不都合な真実ばかり突きつけられる。 もし日本がもう一度あの頃を味わいたいのならば、最近の常識では信じがたい事実を受け入れなければならないだろう。 この国の人達に、その心の準備はあるのだろうか。 ほぼすべての愚民は近視眼的な将来しか議論していないので、なかなか難しいだろうなぁと思う、今日このごろ。
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